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ヘンリー・ウィルソン

シドニー・オーストラリア

「僕は、自分が作ったものがいつかは再利用されることを前提として制作活動を行なっている。それに流行に合わせたデザインにしようとはしていないんだ。」

シドニーを拠点に活動するヘンリー・ウィルソンは、旅人でありクリエイターである。デザインと機能性が完全に調和した作品を作り出すことに長けた人物だ。 矛盾しているようなのだが、(冷たく無機質な)ブルータリズム建築を連想させるウィルソン氏の作品は、〈何も主張していない〉ことを主張している。彼が讃えるのは、高い実用性と素材の活用性、そして産業的な製造過程の中では創造できない美しさ。ウィルソン氏はAesopとも仕事をしながら素晴らしい作品を生み出してきた。彼が作ったテーブルジョイントシステム〈A-Joint〉は、現代の実用性を再定義するでもある。

製品

活動エリア
シドニー、オーストラリア

製品
金属製、石製インテリアや照明

生産場所
シドニー・オーストラリア

活動開始まで

ウィルソン氏はオーストラリアの都市文化の中で、いたって普通に育った。シドニーの中心にあるパディントンで育ち、18歳の時にキャンベラにある大学に行った。しかしデザインの勉強をしたいと強く思うようになり、衝動のままに世界へ飛び出した。 「キャンベラで一年過ごしたあと、交換留学生としてロードアイランド・スクール・オブ・デザイン [アメリカでもトップクラスの美術大学] に在学した。僕がいたのはたった半年間だけだけど、その経験があったからこそインダストリアルデザインの道に進んだ。それまで家具作りに夢中になっていたことも、創造意欲を掻き立てたんだと思う。」 デザイン業界に関わる家族はいるかと聞くと、母が建築家だったと教えてくれた。 彼女は建築家として長く働いた訳ではなかったが、持ち前のセンスはそこで培われたのだと言う。 どうやら、ウィルソン氏は母に共感することが多いらしい。 「僕の母はたくさん旅をして、素晴らしい審美眼を備えている。彼女の建築家としてのキャリアや、旅を通してセンスを磨く生き方から影響を受けたところは大きいかな。僕自身、家具のデザインには常に興味があったし、やってみたいと思っていたことだったんだ。」 「デザインを巡る一人旅」と題した短い旅に出かけると、ウィルソン氏は再び美術学校に入学した。オランダにあるデザイン・アカデミー・アイントホーフェン、デザイナーを志す人々の間ではカルト的人気を誇る学校だ。デザインに対してコンセプチュアルなアプローチをするという点が魅力的だったと言う。 ここで人文学(Man and Humanity)の修士課程を修めたことは、自身のキャリアとして何をやりたいかを考えるさらなる契機となった。 「自分のスタジオを持とうと考え始めたのもこの頃。ここで過ごした時間は僕にとって重要なものだった。自分のキャリアをスタートさせる直前の、最後の学生生活だったと言うのが大きいと思う。」 とめどなく溢れるアイディアや閃き、これまで蓄積した知識と共に、彼はヘンリー・ウィルソン・スタジオ立ち上げに向けて動き出したのである。

「その製品がどれだけ長く使えるか、そしてそれは再利用できるかを常に意識している。」

デザイン哲学

ウィルソン氏は、慎重にバランスを取りながらデザインも機能性もどちらも大切にしているデザイナーだ。彼が作品に求めるものを聞いてみると、それは作品が彼よりも長く存在し続けることだと言う。どんな形や機能を持っているものであっても、その思いは変わらない。 「その製品がどれだけ長く使えるか、そしてそれは再利用できるかを常に意識している多くの原料をかけあわせることによって最終的にリサイクルしにくくなってはいないかと自問自答しているんだ。」 ウィルソン氏にとって、どのように原料を配合したか、或いはしなかったかは、作品の完成形を決めるのと同じくらい大事なことである。 「複数の原料を掛け合わせたとしても、鋳造されたものの多くは、一つの素材へと変貌する。だから精練所へ持っていくだけでまた別のものに変えることができる。」 これこそが彼の目指す作品のあり方なのだ。

「どれだけトレンドから離れたデザインにできるか」

実用性 / 普遍性

多くのデザイナーがメディアに媚びながら流行りのスタイルを取り入れる一方で、ウィルソン氏はその流れを逆行している。 「出来るだけトレンドから離れてものを作りたい。僕は自分が作ったものがいつかは再利用されることを前提として制作活動を行っているんだ。どんな空間にも馴染み、流行り廃りのないデザインにしたい。」 作品に込められたのは、流行り廃り関係なく、長く使ってもらうための実用性。彼が常に追い求めるものだ。

美術学校での日々やひとり旅など世界中を旅した彼は、数えきれないほどのデザイン思想に触れてきた。しかしその中でも彼の哲学に大きな影響を与えたのは日本だ。 「日本のデザインには、使い手に対する素敵な思いやりがあると思う。」 そこには思考のプロセスがあり、製品を使うとそれがわかる、と彼は呟くように言った。 「いたって平凡な素材から生まれた複雑な製品をみると小さな閃きをもらえる。日常生活の中の些細なものから、デザインの発想に繋がる小さな発見があるんだ。」

地域に根付く

彼の故郷に焦点を当ててみよう。ウィルソン氏はオーストラリアのアーティストと仕事をすることにも熱心で、こうした地域的な繋がりはいまだに強い力を持っていると信じている。グローバル化がより一層進む中で、地域の会社がその地域の人を雇うことは素晴らしいことだと彼は言う。 素晴らしい会社がたくさん設立されるのを見てきたと、現地のクリエイターの中で活動してきた期間を振り返るウィルソン氏。 「そういう会社の人たちと働くのが好きなんだ。彼らは柔軟に対応できるし動きも早い。新しいことも取り入れてどんどん進化していく。迅速に顧客のニーズに応えていけるのは彼らの大きな強みだね。それに若い駆け出しのデザイナーにも好意的なんだ。」

インスピレーション

子供時代を振り返ってみても、彼のDNAにいかに実用的なものへの情熱が組み込まれていたかがわかる。 「車や船、他の乗り物でも、使いやすく設計されて人に使われているものが大好きだったんだ。ずっと夢中だった。」 “旅”と”インスピレーション”は相性のいい組み合わせだ。もはやほとんど決まり文句と言っていい。しかしウィルソン氏が自身の旅について語る言葉は、とても現実的であるだけでなく、優れた洞察力にも溢れている。

バルセロナを旅するウィルソン氏

@mattvines

日本の話に戻ると、この国のものづくりの伝統に何か惹かれるものを感じたと言う。 「木工をしていた経験があったから特に、日本の工芸に惹かれた。その芸術性は明らかで、工芸品が持つ美には自分の感覚と近しいものを感じた。これまで様々な目的のために日本を訪れたけど、特別な思いれがある国なんだ。」 大胆で統一感のあるウィルソン氏の作品は、基本的に彼が使用している材料からインスピレーションを得ている。石や金属が持つ荒く堅固なイメージだ。 そうしたものは無機質で冷たい印象を与えるが、ウィルソン氏の作品では温もりを感じるものでもある。 「僕たちはただ目に入った素材を使っているだけなんだ。特別なものを探し出したりすることはしないけど、いつも何か新しいものがないか目を光らせている。」 さらに彼は続ける。 「磁器やレザー、ガラスや鉄、全ての材料に惹かれる。デザイナーとして、目的にあった材質をきちんと選び出せるようになるべきだとも思う。だからどんな材料が好きかと聞かれたら、それぞれの作品に適したものだって答えるよ。」

自然の中に作られたブルタリスティックなデザインのプールに、ウィルソン氏は刺激を受けた。

「僕が作るものは、普遍的で再利用されるものにしたい。」

デザインの工程

ヘンリー・ウィルソンの作品が作り出される工程は、それがどんな場所に設置されるかを想像することから始まる。「建築やインテリアデザインにとても興味があるから、そうしたものの一部として考え出すことは確かだね。」さらに、彼のこだわりをもう少し掘り下げると、「そして自分がどんなものを選ぶかにも強く影響を与える気がする。ーこんなものが部屋にあったらどんな感じだろうって想像してみるんだ。」 目まぐるしいデザイン業界の流れの中でも、流行に流されない姿勢は変わらない。 「最近気づいたことがあるんだ。おしゃれなブログやウェブサイトに載っているデザイン家具は確かに目を引くんだけど、使い勝手がいい家具じゃない。デザイン性だけで成り立っているようなものだから。確かにそれもありだと思うし、ビジネスとして賢い方法だとも思う。だけど僕は、誰かが部屋に飾っていることをイメージしやすくて、所有者が手元にずっと置いておきたくなるものかどうかを考えていきたい。」 そう、ウィルソン氏にとっては、結局その〈実用性〉が全てなのだ。 常に心に留めているのは、「この作品がある空間で自分が毎日過ごすとして、その作品は僕の生活と心を豊かにしてくれるだろうか?」ということだと教えてくれた。それこそが彼の信念であり、自身への大きな問いかけなのだ。

これまで手がけた大きなプロジェクトの一つが、オーストラリアのスキンケアブランドAesopとのコラボレーションだ。これによってウィルソン氏の名前は一気に広まった。共に仕事をするきっかけになったのは、ヘンリー・ウィルソン・スタジオがシドニーのバルマインにある古いパン屋をAesopショップに改装したことだった。この店は同ブランドの中でも有名な店舗のひとつになっている。 Aesopの滑らかなブラスオイルバーナーをデザインしたのも彼。制作当時のことを尋ねると、「あの製品はコラボだけど、僕たち(wilson’s studioのメンバー)がデザインしたものをベースに、Aesopと一緒に試行錯誤を重ねた。そしてAesopは、この製品をどのように捉えるかという解釈をカスタマーに委ねたんだ。いい議論の場がたくさんあった。Aesopはたくさん仕事の機会をくれたし、いい関係性の中で多くのものを得たと思う。」と答えてくれた。

彼にとってデザインとは、作品の形を決める以上の工程を含んだものである。 材料の特性を十分に活かすことに力を注ぐ彼はこのように言う。 「自分が作るものは、普遍的で再利用されるようなものにしたい。素敵なアイディアだと思わない?」 実用的で均整が取れた形、荒々しいような自然を感じる唯一無二のヘンリー・ウィルソンの作品。そして作品と同様に、彼のデザインは時間の概念を超え、どんな場所にも馴染み、そして誠実なのである。

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